【異文化を考える時に③】
~時間・立場等の切り口から考える~
皆さまこんにちは、日本翻訳センターK.A.です。
このブログコーナーは、私たち(翻訳者の方々および社員)が
日頃から触れている翻訳やその他業務を通じて感じることを
海外とのビジネスや交流に関して、そのヒントになっていただければ、と思い発信をしていきます。
お気軽にお読みいただき、皆さまの何らかの参考になりましたら幸甚です。
異文化を考える時に③
~時間・立場等の切り口から考える~
今回の第三回目で取り上げたいのは「異文化を考える時の切り口」に関してです。
一回目はコンテクストでの話題でしたが、
今回はそれ以外で一般的な切り口に関してのご紹介をします。
2:勢力差(power distance)
3:不確実性の回避(uncertainty avoidance)
4:男性性(masculinity)と女性性(femininity)
5:個人主義(individualism)と集団主義(collectivism)
6:長期志向と短期志向
7:気まま(indulgence)と抑制的(restraint)
おわりに
1:時間の感覚(モノクロニックタイムとポリクロニックタイム)
直訳では、モノ(mono:単数)とポリ(poly:複数)、
クロニック(chronic:長期にわたるという意味)と時間(time)の組合せで、
時が流れていく際の過ごし方の感覚です。
「モノクロニックタイム」はスケジュールを重視して
一つ一つ物事を処理していこうという感覚です。
一般的なビジネスライクはこちらであり、
欧米の特に都市部はこの感覚が普通です。
一方「ポリクロニックタイム」は、同時に物事が流れていく中で、
その都度状況に合わせて対応していくという感覚です。
具体的には、朝の会議に遅れて参加した部下に理由を聞くと、
会議は分かっていたが、朝食の家族の会話が盛り上がって
それを優先させたら遅刻した、という例です。
この場合、確かに仕事人としては困るが、
このような考え方が根底にあることを知っておけば、
叱り方や教育方法も変わってくるということです。
アジアの特に農村部での生活のリズムは
このポリクロニックの考え方が多くなります。
2:勢力差(power distance)
この勢力差の大小が決まってきます。
例えばキリスト教でも、カトリックの勢力差は大きく、
プロテスタントの勢力差は小さくなっています。
つまり伝統や権威があるものは大きく、
民主的や平等を重要視する場合の勢力差は小さくなります。
日本では昭和初期の教師や父親と現代の教師や父親の比較が分かりやすい例です。
前者の勢力差は大きく、後者の勢力差は小さくなります。
3:不確実性の回避(uncertainty avoidance)
人間誰でも不確実なことには脅威や恐れを抱きます。
不確実性の回避とは、その不確実なことを受け入れる許容度合い(ストレスへの耐性も含みます)や度量のことを指します。
日本ではリスクテイク(risk taking)は多くの人が嫌い
「石橋を叩いて渡る」傾向が高いですが、
海外にはタブーやリスクを乗り越えてチャレンジしていく人も多く存在します。
米国の開拓者精神(pioneer spirit)はこの最たる例になります。
一般に農耕民族は保守的傾向が高く、
狩猟民族は自己責任という考え方が浸透しており、
積極的にリスクとチャンスを天秤にかけて挑戦していく傾向が高くなっています。
4:男性性(masculinity)と女性性(femininity)
男性性とは、白黒はっきりつける、お金や物質に換算して考える、といった考え方、
女性性とは、人間関係を重視し社会調和や妥協と交渉を大事にするといった考え方となります。
これもどちらがどうだ、ということは決してありませんが、
考え方の傾向として日本は女性性の国、米国は男性性の国と言われます。
5:個人主義(individualism)と集団主義(collectivism)
個人主義(狩猟民族に多い)と集団主義(農耕民族に多い)といった捉え方になります。
収穫期に台風が来て作物が全滅になった場合でも、
それは誰の責任でもなく「神様の仕業」であり、
「しょうがない」という考え方で諦めます。
一方、狩猟民族は、
獲物が取れないのはすべて「自己責任」であり、
獲物の見つけ方・罠や狩猟道具の良し悪し、
全てが本人の責任であり、
成功も失敗も個人に帰着するという考え方です。
6:長期志向と短期志向
長期志向は、倹約や貯蓄を通して私事よりも組織での大きな目標に向かう考え方、
短期志向は目先のことを大事する考え方となります。
以前日本の経営者は、自分の任期だけでなく長い目での経営をしている、
一方、米国の経営者は、四半期毎に株主に対して説明責任があるので、
短期的にしか物事を見れない、ということがまことしやかに言われた時代もありました。
このことに関してのコメントは差し控えますが、
アングロサクソンの世界を牛耳るための構想力は、凄いものがあると感じております。
7:気まま(indulgence)と抑制的(restraint)
ここでは笑い話の具体例を提示します。
車道で車が走っていないにも関わらず、
歩行者用信号が赤であれば、
東洋では日本が
西洋ではドイツが
律儀に信号待ちをする。
それ以外の国は、赤信号でも車が来ていないので渡る。
(それは気ままな性質なのか?合理的なのか?は議論のあるところですが、
ラテン系は気まま、また寒い地域に住むと抑制的な傾向が出やすい面もあるようです)
おわりに
いかがでしょうか。
今回お話をした7点の切り口を知って、
異文化でのそれぞれ相手の考え方やアプローチの仕方が分かると、
さらにより良いコミュニケーションや交渉への可能性が広がります。
是非ご参考にしてみてください。
おわり
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