コミュニケーションのseeds
―ビジネスパーソンのための「美術鑑賞」 はじめの一歩②―
皆さんこんにちは。日本翻訳センターのRです。
本日は、
ビジネスパーソンのための「美術鑑賞」 はじめの一歩
第2回です。
(前回分、第1回目はこちらから)
ものの考え方や捉え方、視点に変化や多様性が生まれる
ある仕事についてリサーチしているとします。
徹底的に素材を集め、さんざん考えているけれど、
決定的な答えやアイデアが出てこない。
そんな時は、美術館や博物館で今自分が抱えていることとまったく違うことに意識を向けてみてはいかがでしょう。
これはアートに触れるから良い、ということではありません。
一旦目の前のテーマから離れる、
脳が自由に、クリエイティブな状態にする工夫です。
…と、そんなに上手くいくことはなかなか無いかもしれませんが、
あれこれ考えていた全く別のことと、目の前の作品から受けた印象が、
不思議とリンクしたり、ひらめきにつながったりすることがあるのです。
次の3つをぜひ試してみてください。
b. 作品との「コミュニケーション」を意識して見る
c. 言葉に置き換えてみる
a. よく観察する
一般的な評価など気にせず、まずは自由に主観的に見てください。
その次の段階で、ある作品に興味を持ったら
作品の「作者」「タイトル」だけでなく「年代」「手法」「素材」等もチェックです。
アートには絵画だけでなく彫刻、映像作品等々際限なくあります。
人がほとんど手を加えていない作品すらあります。
マルセル・デュシャン 「泉」 1917年 陶器
‘Fountain’, Marcel Duchamp, 1917, replica 1964 | Tate
こちらは20世紀美術史の誇る(?)「名作」で、人の手の殆ど加わっていない作品です。
既製品の便器に、作家とは別の名前のサインが入っているだけ。
フランスの作家ですが、第一次大戦中のニューヨーク在住中に制作されました。
当時の最先端のずっと先を行ってしまい、展覧会での展示を拒否された経歴を持つ伝説的な作品です。
既成の価値観、常識に「?」を投げつける、否が応でも考えさせる、
これがデュシャンという作家の目的の一つだと思います。
アーティストでありながら、「アンチ(反)・芸術」「既製品」というキーワードで語られる作家です。
b. 作品との「コミュニケーション」を意識する
「コミュニケーション」には摩擦も融合もあります。
良い・悪いの二元論ではありません。
言葉でのコミュニケーションでも、ただ単に話が「通じる・通じない」だけではありませんね。
作品とのコミュニケーションとは、初歩的には例えば以下のようなことではないでしょうか。
「なんだか不愉快」
「めちゃくちゃだけどワクワクする」
「全く意味が解らない」
「これなら私にもできるな…」
先ほどの「泉」はどうでしょう?
マルセル・デュシャンは「既製品(レディ・メイド)」を自分の作品として選ぶ際、
美的な感動や好悪などの感情を喚起しないことを基準として「モノ」を選んでいたそうです。
コミュニケーションをわざわざ拒否しているようですね。
(裏を返せばコミュニケーションについてかなり意識しているということでしょう)
c. 言葉に置き換えてみる
— これはぜひ試していただければと思います。
受けた印象や考えたことを言語化してみましょう。
言語化は「おしゃべり」でも「文章化」でも構いません。
家族や友人に、美術館や博物館での「体験」について話してみる。
日記やSNSなどで自由に感想を書く。
(誰も見ていなくたって良いわけです)
言語化することで徐々に自分が感じたものの輪郭がはっきり見えてくると思います。
上手く言語化できなくても、ぼんやりとしたことでも何でも、主観的に自分勝手に言語化してみてください。
「なぜこの作品が世の中でそんなに評価されているのか?」、
「これは何かの問題提起だろうか」等と、
どんどん自分に引き寄せて考えられるようになります。
また、多くの作品と出会うことにより
自分なりの美意識や判断基準ができてくると思います。
仕事の中で美意識などが発揮される場面は、必ずしも無いかもしれません。
ただ、美術鑑賞を通じて「考える練習」「経験値を上げる」ことで、
「ものの考え方や捉え方、視点に変化や多様性が生まれる」ことにつながるのではないでしょうか。
美術鑑賞に「正解」はありません。
すてきな美術体験を!
ありがとうございました。
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